ワニ リンク集
ワニ(鰐)は、標準和名で「ワニ目(ワニもく)」と呼ばれ、学名では「ordo Crocodilia」として分類される、肉食性水棲爬虫類の俗称。
長い吻と扁平な長い尾を持つ。背面は角質化した丈夫な鱗で覆われており、眼と鼻孔のみが水面上に露出するような配置になっている。オリノコワニでは全長7メートルに達する記録もあるが、キュビエムカシカイマン、ニシアフリカコビトワニなどの小型種では、1.5メートルほどで成熟する。大型種では体重1トンに達する個体も存在するなど、現生爬虫類としては最重の一群を含む。
中生代三畳紀中期に出現して以来、初期を除く全ての時代を通して、ニシキヘビ等の大蛇と並び、淡水域の生態系において生態ピラミッドの最高次消費者の地位を占めてきた動物群である。
ワニ目は、中生代三畳紀中期に出現した絶滅グループ・スフェノスクス亜目を始原とし、原鰐亜目・中鰐亜目を経て、唯一の現存亜目である正鰐亜目につながっており、分類学上はそれら全てを「ワニ」と言う。
現生の動物群の中で鳥類とは進化系統上最も近縁の関係で、ともに主竜類に属する。なお、同じ主竜類中には絶滅した翼竜や恐竜も含まれる。
三畳紀より大きさの違いはあれ、形態的にはほとんど変化していない。恐竜よりもわずかに古い時代から地球上に存在し続けている動物群である。恐竜の栄えたジュラ紀、白亜紀は彼等にとっても繁栄の時代であり、陸棲種、海棲種、植物食種、濾過摂食(プランクトン食)種、超大型種など多様な環境に適応した種を数多く生み出した。また、恐竜が絶滅に追い込まれた白亜紀末を、彼らが(前述のような多様な種を失いながらも)なぜ生き延びられたのかについては解明されていない。
現生種は熱帯から亜熱帯にかけて23種が分布し、淡水域(河川・湖沼)および一部の海域(海岸を主とする海)に棲息する。水場からあまり離れることはない。
現生種は、おもに魚類・甲殻類・貝類といった水棲生物や、水場に現れた爬虫類・哺乳類などを捕食する(上述のように絶滅種まで含めると、非常に多様性に富んだ分類群で、この食性に当てはまらない種も相当数ある)。水中では四肢を体側に密着させて、体を大きく波打たせ、尾を左右に振り、すばやく泳ぐ。水面に浮かび、岸辺に近づく動物を待ち構えていることが多い。尾の力を利用して水面上に飛び上がることもできる。陸上では鈍重なイメージがあるが、短距離ならば意外なほどの高速で移動できる。陸上で日光浴をしているときは、体温調節のために口を大きく開けていることが多い。
アフリカのワニチドリという鳥は、ナイルワニの口の中の餌の残りをついばみ、ワニの口の掃除をしているとされ、共生の例として取り上げられることもあるが、実際には積極的についばむ行動はほとんど観察されなかったという報告もあり、懐疑的な意見もある。
繁殖期のオスはメスを誘うために大きな鳴き声を挙げ、幼体は危険を感じると独特の鳴き声でメスを呼ぶなど、個体間のコミュニケーションが発達しており、爬虫類の中でもっとも社会性があると言われている。メスは産卵のために巣を作り、卵が孵化するまで保護したり、孵化直後の幼体を保護する種類もある。また、トカゲやヘビのような有鱗目の交尾に用いられる雄性生殖器が1対の半陰茎であるのに対し、ワニでは対を成さない1本の陰茎である。
強力な免疫機構を持ち、不潔な泥水の中で四肢を失うような大きな傷を受けても、重篤な感染症はほとんど発生しない。1998年には、ペニシリンに耐性を持ってしまった黄色ブドウ球菌などに対してワニの血液中のいくつかの抗体が殺菌能力を有することが報告され、ワニの血清はHIV(エイズウイルス)を無力化する能力を持つことも明らかにされている。
さまざまな爬虫類で見られるように、ワニでも胚の発生時の環境温度によって性別が分化し、特定の温度帯以外では片方の性に偏ってしまうという性決定様式を持っている。そのため地球温暖化の影響で性別のバランスが崩れることが懸念されている。
出典:フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』